「このまま定年まで会社員を続けて、後悔しないだろうか」。40代に入ると、ふとそんな思いがよぎる方もいらっしゃると思います。
私は法務の仕事にやりがいを感じていました。それでも、「一度きりの人生、やりたいことはやっておきたい」という思いが頭を離れず、42歳でFIRE(経済的自立と早期リタイア)を選びました。
この記事は、FIREを勧めるものではありません。ただ、こういう選択肢が頭の片隅にあるだけで、ストレスが軽減されるかもしれません。そう思って、私の選択の中身を書いてみたいと思います。
このまま会社員を続けて、後悔しないか
役職が上がり、責任も収入も増えていく。それ自体は、ありがたいことです。けれど、ふとした瞬間に「この先もずっと、このままなのだろうか」と立ち止まることが、私には何度かありました。仕事に不満があったわけではありません。法務の仕事にも、同僚との協働にも、やりがいを感じていました。それでも、消えない思いがあったのです。
言葉にすると、「やらない後悔はしたくない」という思いでした。私の場合、やらずにいたら後悔するだろうと感じていたことが、二つありました。
一つは、自分で事業をして、成果を出してみたいということ。会社の看板や肩書きではなく、自分の力でどこまでできるのか、一度試してみたい。その気持ちが、年を追うごとに強くなっていきました。もう一つは、時間の自由を取り戻すことです。平日は仕事に追われ、家族と過ごす時間は週末に偏りがちでした。子どもが小さい時間は、長くは続きません。家族との笑顔の時間を、もっと確保したい。そう思うようになっていました。
二つの後悔を天秤にかけた、42歳の決断
大きな決断には、いつも二つの後悔がついて回ります。やって失敗する後悔と、やらないままの後悔です。私も、この二つを天秤にかけました。
やって失敗する後悔のうち、いちばんの不安は「お金が尽きるのではないか」というものでした。けれど、これは資産と支出を具体的に数字に落として計算してみることで、ほとんど消えました。
私自身、初めて試算したときに出た数字は、当時の資産からは遠いものでした。けれど、前提を一つずつ見直していくと、「このままでは届かない」が「この形なら届く」に変わっていきました。漠然とした不安が、向き合える大きさの課題に変わった瞬間です。「足りなくなるかもしれない」という不安は、計算すると具体的な大きさになり、向き合えるものになります。私の場合、その結果、生活していけるだけの土台はある、と確認できました。具体的な計算の手順は、別の記事にまとめています。
自分のFIREラインを計算する5ステップ【1.5億円でFIREした私の計算式】
もう一つ、背中を押してくれたものがあります。タイミングです。近年、AI(特にエージェント型AI)が登場し、個人がひとりでも事業を回せる環境が、急速に広がってきました。大きな組織や潤沢な人手がなくても、できることが、着実に増えてきています。自分で事業を始めるなら、いまは決して悪くないタイミングだと感じました。たまたま、周囲に独立した友人、同僚がいたことが、自分で事業をすることのハードルを下げてくれたかもしれません。
こうして二つの後悔を並べてみると、答えは見えてきました。やって失敗する後悔は、計算とタイミングで、かなり小さくできる。一方、やりたいことをやらないまま時間だけが過ぎていく後悔は、後から取り返すのは難しいものです。私にとっては、やらない後悔のほうが、ずっと大きかったのです。
FIREは、思うほど高いハードルではない
FIREというと、何億円も貯めて完全に働くのをやめる、というイメージを持たれるかもしれません。けれど、それだけではありません。
たとえばサイドFIREという形があります。生活費は、配当金やインデックスファンド(オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)など)の取り崩しでまかない、旅行や趣味といった楽しみのための費用は、好きな仕事(私の場合は個人事業)で稼ぐ。そういう考え方です。すべての支出を資産で賄おうとすると遠い目標に見えますが、「生活費だけ」と切り分けて考えると、ずいぶん現実的になります。
もちろん、会社員には会社員の良さがあります。私自身、会社員時代には、個人ではとても扱えない規模の仕事に関わる機会がありました。大きな組織の看板や仲間がいたからこそ動かせたものが、確かにあります。その価値を知っているからこそ、どちらが上、という話ではないと思うのです。ただ、会社員のままでは手に入れにくいものもあります。仕事のことを気にしなくていい、家族との時間。平日の、空いているランチ。航空券が安い時期を選んで行く海外旅行。手に入るものが、ただ違うのだと思います。
FIREして実際にどうだったか、何が良かったかは、もう少し時間が経ってから、あらためて書いてみたいと思っています。
まとめ 選択肢を、頭の片隅に
もう一度お伝えしますが、私はFIREを勧めているわけではありません。会社員を続けることも、立派な選択です。
ただ、「やらない後悔」という観点から、FIREという選択肢を頭の片隅に置いておく。それだけで、日々の仕事への向き合い方が、少し変わることがあります。今の会社の外にも道があると知っているだけで、肩の力が、少し抜けることもあるからです。
死ぬ時に後悔するのは、「やって失敗したこと」ではなく、「やらなかったこと」だと聞いたことがあります。もし、お金の不安が引っかかっているなら、最初の一歩は、自分のFIREラインを計算してみることかもしれません。漠然とした不安は、数字にすると具体的な大きさに変わります。意外と手が届くと分かるかもしれませんし、あといくら必要かが見えてくるかもしれません。そのうえで、私がどんな道を歩いてFIREに至ったのか、軌跡が気になれば、そちらものぞいてみてください。
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