「FIREするには2億円必要」と聞いて、遠い話だと感じた方は多いのではないでしょうか。
一方で、「2億円でも足りない」という声もあります。結局いくらあれば安心して辞められるのか、分からなくなります。
私は42歳のとき、総資産1.5億円で、子育てをしながらFIREしました。
この記事では、2億円でも足りないのはどんな場合か、1.5億円の私がなぜ辞められたのかを、実際の家計の数字で比べます。ご自身のFIREの検討、資産額の目標設定の参考になればと思います。
- FIRE=働かなくても生活が回る状態
- 必要資産の目安は、生活費の約「30倍」
- 42歳・1.5億円でFIREした私の家計の中身
FIREとは「働かなくても生活が回る状態」
FIREをひとことで言うと、働かなくても生活費を賄える状態です。 式にすると、次のようになります。
資産から得られる年間キャッシュ ≧ 年間の生活費
これが成り立てば、FIREできます。
キャッシュを得るのに必要な資産の目安は、「年間生活費×30」です。資産の多くを、オルカンのような株式中心の投資信託で運用しながら取り崩していく前提の数字です。
なぜ「25倍」ではなく「30倍」を目安にするのか
米国の研究結果では、投資資産の4%を毎年取り崩しても、30年以上資産が枯渇することはありません(4%ルール)。
このため、FIREに必要な資産は「年間生活費の25倍」と説明されることが多いです。年間生活費が400万円なら、25倍の1億円が目安です。私は、日本に住む前提なら、生活費の「30倍」が必要だと見ています。理由は3つです。
- 税金:4%ルールは税金を織り込んでいません。米国では株式の売却で得た利益に対する課税が原則ないからです。一方、日本では利益の約20%が課税されます。株式を100万円売却しても、そのうち20万円が含み益であれば、約4万円が税金で持っていかれるため、手元に残るのは96万円になってしまいます。生活費に100万円必要であれば、より多くの資産を持っている必要があります。
- 投資しない現金の余裕:「25倍」は、オルカンなどの株式インデックスファンドで運用している資金に対する数字です。実際には、急な出費や相場が下がったときに売らずに済むよう、生活防衛費として、生活費の1〜2年分ほどの現金も必要です。
- 取り崩す期間の長さ:4%ルールは30年の取り崩しを前提にした研究です。寿命を90歳と考えた場合、40歳なら50年、50歳なら40年あります。取り崩す率に余裕を見ておきたいところです。
細かな計算をすると、25倍に税金を上乗せすると約27.8倍、生活防衛費の現金2年分を足すと約29.8倍です。ここに長い取り崩し期間への備えを重ねて、切りのよい30倍を目安にしています。
FIREに必要な資産額の絶対的数字はなく、生活費が必要な資産額を決めます。 「いくらあればFIREできますか」という質問に、金額だけで答えられない理由がここにあります。
資産が多い順にFIREできるとは限らない【2つの試算】
2つの試算を比べます。AさんとBさんは、「生活費×30」で計算した架空の例です。私の実例は、このあとの「私はなぜ1.5億円でFIREできたか」で紹介します。
| ケース | イメージ | 月の生活費 | 必要資産 | 保有資産 | FIRE判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | 都心持ち家 ・ 子育て | 60万円 | 約2.2億円 | 2億円 | 不成立 |
| Bさん | 住居費が軽い世帯 | 20万円 | 約7,200万円 | 8,000万円 | 成立 |

Aさんは、2億円もの資産があっても、FIREには不足します。順に見ていきます。
Aさん:資産2億円・生活費月60万円
都心の持ち家で住宅ローンがあり、教育費もかかる。生活費が月60万円という水準の世帯です。年間では720万円です。
必要な資産は、720万円×30=約2.2億円です。
「運用しなくても、2億円あれば暮らしは安泰」と直感的に感じますが、年間720万円ずつ使うと、資金が枯渇してしまいます。
FIREを目指す場合、生活費が月60万円なら、2億円はまだ通過点です。
Bさん:資産8,000万円・生活費月20万円
住居費が軽いなど、月20万円の生活費は珍しい水準ではありません。年間では240万円です。
この生活費を維持できるのであれば、必要な資産は、240万円×30=7,200万円で済みます。
資産8,000万円お持ちであれば、FIREは成立します。「FIREにが億が必要」とは限りません。
なぜ差がつくのか【必要額を決めているのは生活費】
このように、FIREの可否を決めるのは、資産額の大小ではなく生活費です。必要な資産額は「生活費×30」で決まるため、掛け算の元になる生活費が大きければ、必要資産は大きくなります。
生活費が月1万円=年間で12万円上がると、必要資産は約360万円上がります。 月5万円なら約1,800万円です。資産を1,800万円積み増すのと、生活費を月5万円見直すのは、FIREの計算上は同じ意味を持ちます。生活費の差が、30倍になって必要資産に跳ね返るのです。
だから、FIREを考える順番は「いくら貯めるか」ではなく、「いくらで暮らせるか」が先です。

私はなぜ1.5億円でFIREできたか
私の実例:資産1.5億円・生活費月26万円
私の資産の内訳は、次のとおりです。
- 運用中の資産:1.1億円(高配当株9,000万円+インデックスファンド2,000万円)
- 現金:1,000万円(生活防衛資金500万円+投資の待機資金500万円)
- iDeCo:3,000万円(60歳まで動かせないため、判定から除きます)
わが家の世帯生活費は月約40万円で、妻と分担しています。私の負担分は月26万円、年間312万円です。
内訳は、3分の1が住居費(賃貸)で、残りが光熱費・食費・子ども関連の出費です。
必要資産を目安式に当てはめると、312万円×30=約9,360万円です。iDeCoを除いた資産1.2億円は、この目安を上回っています。
年間312万円の生活費に対して、資産が生むキャッシュは次のとおりです。
- 高配当株の配当金:年間360万円 → 税引後 約280万円
- インデックスファンドの取り崩し(年4%):年間80万円 → 税引後 約74万円
- 合計:年間約354万円
生活費312万円に対して、42万円のプラスですので、遊興費(家族旅行などの思い出作りや、贅沢)に使っていきます。
FIRE後の今は個人事業をしていますが、その収入はFIREの判定に入れていません。事業で得たお金は、遊興費にあてる予定です。
生活費の数え方と、わが家の家計の内訳は「FIREの生活費の内訳はいくら?月26万円の実例と共働き・教育費の数え方」に書いています。
辞めてから分かった、見積もりの外にある支出
辞めて3ヶ月で、生活費26万円の見積もりから漏れやすい支出がいくつかあると分かりました。
- 住民税:今年の所得に対する税金を、翌年に納付する仕組みです。退職した年は、会社員のときと同じ額を自分で納付します。退職の翌年も、前年の給与収入に応じた納税があります。納税用の現金を、先に分けておく必要があります
- 社会保険:私は家族の扶養に入ったので、健康保険料も国民年金も負担はありません。扶養に入れない場合は、国民健康保険料と国民年金保険料が生活費に加わります。退職前の所得が大きいと、翌年の保険料が高くなるので注意が必要です
- 健康診断:会社の健康診断がなくなります。私は2年に1回くらい、人間ドックに入るつもりです
- 事業の持ち出し:個人事業をする場合、売上がなくてもAIのサブスク代などの費用は必要です
生活費の把握が第一歩【私は家計簿アプリに任せています】
FIREできるかどうかは、生活費を把握しない限り判断できません。感覚で見積もると、月2万円のズレでも、必要資産では約720万円のズレになります。
把握というと面倒に聞こえますが、私は3年前から家計簿アプリのマネーフォワードMEで自動化しています。やっているのは次の3つだけです。
- 支払いをできるだけクレジットカードに寄せる
- 銀行口座とカードをアプリに紐づける(あとは勝手に家計簿をつけてくれます)
- 夫婦で共有設定にしておく(配偶者が見ているかは、よく分かりませんが)
1ヶ月に一度、ざっと見るくらいです。出費が多かった月はしっかり見ます。節約ばかりだと息苦しいので、見すぎないくらいがちょうどよい、というのが3年使った実感です。
アプリを使わない場合でも、決済をクレジットカードに寄せて、明細を毎月確認するだけで、生活費の大枠はつかめます。
まとめ FIREは生活費から考える
- ■FIREの可否を決めるのは資産額ではなく生活費
- ■必要資産額の目安は「年間生活費×30」
- ■私は生活費月26万円。運用資産1.1億円+現金1000万円でFIRE
- ■生活費の把握が出発点、家計簿アプリで自動化がおすすめ
まずは今夜、先月の生活費を確かめてみてください。 クレジットカードの明細と口座の引き落としを眺めるだけでも、FIREへの最初の一歩になります。
FIREを実現できたのは、生活費を整えることと、収入を増やすこと、の両輪でした。37歳の転職で年収が約1,000万円から約1,200万円に増え、増えた分をそのまま投資に回せました。当時の進め方はJACリクルートメント体験談に書いています。
