法務のキャリアパスは2つ【専門性を磨くか、複数の会社を経験するか】

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40代に入ると、「法務として、この先どうしていくのだろう」と考える瞬間が増えてくるのではないでしょうか。営業や企画の同期が、事業の最前線で新しい役割に挑んでいく。そんな姿を横目に見ながら、法務という仕事に後悔はないけれど、自分のこの先の地図は少し描きにくい。そんな思いを抱く方は、少なくないように思います。

法務のキャリアパスは、大きく分けると「今の会社で専門性を磨き続ける道」と「複数の会社を経験する道」の二つがある、と私は考えています。私自身、新卒から数えておよそ18年、2つの会社で法務を続けてきました。

この記事では、両方の道を歩いてみて見えてきたものを、できるだけ率直に書いてみたいと思います。

目次

今の会社で専門性を磨く 法務の「王道」

法務のキャリアパスは、他の職種に比べると、進む道筋が比較的はっきりしている仕事だと思います。華やかな転身は多くありませんが、その分、足元を固めながら着実に積み上げていける世界でもあります。

王道は、やはり今の会社で法務の実務を磨き続けることです。契約審査、法律相談、紛争対応。一つひとつの案件に向き合いながら、専門性と、マネジメントの力を高めていく。この延長線上には、二つの方向があります。一つは、マネジメントの階段を上り、法務部長や管理部門の責任者を目指す道。人と組織を動かすことにやりがいを感じる人に向いた道です。もう一つは、契約や知的財産、コンプライアンスといった特定の分野を深く掘り下げ、専門職として頼られる道。一つのテーマをとことん突き詰めることが好きな人に向いています。どちらが上ということはなく、自分の性格や得意なことに合うほうを選べばよいのだと思います。

そして、どちらに進んでも、役職や専門性が上がるにつれて、年収もそれに応じて上がっていくのが一般的です。法務のマネージャー職、たとえば課長や法務部長の年収は、会社の規模や業界によって幅はあるものの、専門職としての価値が正当に評価されやすいポジションだと感じています。

私自身、社会人になってからの長い時間を、この王道のなかで過ごしてきました。一つの会社で経験を重ねることで得られるものは、確かに大きいと感じています。

そして、課長などのマネージャー職に就いたり、40代に差しかかったりすると、もう一つ大きな強みが効いてきます。社内の人的ネットワークです。

これには、私自身もずいぶん助けられました。法務の仕事は、自分一人で完結することがほとんどありません。そして、法律やルールの正しさを示すだけでは、人はなかなか動いてくれないものです。最後に物事を前に進めるのは、「この人が言うなら」という信頼であることが多いように思います。

契約書のレビューでも、現場が納得して動いてくれるかどうかは、条文の正しさだけでなく、日頃のやり取りで築いた関係に左右される場面が少なくありません。何か困ったことが起きたときも、他部門に気心の知れた知り合いがいると、「少し相談したいのだけれど」の一言で話が進み、スムーズに問題を解決できる。そういう場面が、何度もありました。

こうした関係は、一朝一夕には作れません。同じ会社で時間をかけて積み重ねてきたからこそ得られたもので、これは今の会社に居続けることの、確かな価値の一つだと感じています。

複数の会社を経験する お金と心が豊かになる

一方で、もう一つの道があります。複数の会社を経験するという選択です。私は、この道も歩いてきました。複数の会社を経験することには、大きく二つの効果があると感じています。「待遇が上がること」と、「心が豊かになること」です。

待遇が上がる

一つ目は、待遇の面です。転職では、待遇が上がることが多いです。考えてみれば、待遇が下がる条件をわざわざ受け入れる理由はなく、条件が見合わなければ、今の会社に留まればいいだけだからです。私自身、転職によって、年収は額面でおよそ2割上がりました。自分の経験やスキルを、今の会社とは違う物差しで評価し直してもらえたことは、一つの自信にもなりました。

もっとも、転職で年収をどう上げるかには、いくつかの工夫や交渉のポイントがあります。その体験は「JACリクルートメント体験記」にまとめましたので、関心があればそちらをご覧いただければと思います。

JACリクルートメント体験記。登録から内定・年収交渉まで、実際どうだったか

心が豊かになる

二つ目は(私は、こちらのほうがむしろ大きいと感じているのですが)心が豊かになることです。複数の会社を経験すると、自分が当たり前だと思っていた価値観が、実は一つの会社の中だけのものだったと気づかされます。

私の場合がそうでした。1社目は、どちらかと言えば、自社の利益を第一に追求する傾向のある会社でした。ところが2社目は、根っこに「日本のために」という思想がある会社で、難しい意思決定を迫られる場面では、「これは日本にとって、どちらが良いのだろうか」という議論が、当たり前のように交わされていました。仕事の進め方や、業務効率に対する考え方にも違いがあり、正直に言えば、最初はずいぶん戸惑いました。

けれど、その戸惑いこそが、私の視野を広げてくれたと思います。一つの会社にずっといたら、「会社とはこういうものだ」「仕事とはこう進めるものだ」という自分の物差しを、疑うことすらなかったはずです。異なる価値観の中に身を置いてはじめて、自分の物差しが相対化されていく。

正しさは一つではなく、立場や前提が変われば最適解も変わる。頭では分かっていたつもりのことを、二つの会社で実際に身をもって経験できたのは、大きかったように思います。物事を一つの見方で決めつけなくなり、社内の異なる立場の人とも、以前より落ち着いて向き合えるようになったと感じます。この経験は、お金には換えにくい財産になりました。

なお、「会社を変えたほうがいいのだろうか」と迷ったときに、どう考えを整理すればいいかについては、別の記事で詳しく書いています。あわせて読んでいただくと、判断の助けになるかもしれません。

「会社を変えたほうが良いかも」と思い始めた。37歳課長、法務13年目の転職決断

30代課長の転職決断フレーム【得るもの・失うものを全列挙する】

まとめ 2つの道に、優劣はない

ここまで、法務の二つのキャリアパスについて書いてきました。最後に、念のため申し添えておきたいことがあります。

この二つの道に、優劣はないと思っています。今の会社で専門性を磨き、信頼を積み重ねていくのは、それ自体が立派なキャリアです。実際、その道で充実したキャリアを築いている先輩もたくさんいらっしゃいましたし、私自身もそうするだろうと思っていました。

しかし、複数の会社を経験したことが、お金の面でも、心の面でも、自分の人生を豊かにしてくれたと感じています。だからこそ、もし今「自分には今の会社しかない」と感じている方がいたら、転職という選択肢を、頭の片隅に置いてもよいのではないか、と思います。

大切なのは、選択肢を持っておくことです。今の会社の外にも、自分を必要としてくれる場所があると分かるだけで、日々の仕事への向き合い方が、少し楽になることもあるからです。

転職を決めることと、その手前で自分の市場価値をのぞいてみることは、別のことだと思っています。私自身、転職エージェントに登録して、市場価値を確かめてみた体験を、別の記事に詳しくまとめました。最初の一歩として、何か参考になればうれしく思います。

JACリクルートメント体験記。登録から内定・年収交渉まで、実際どうだったか

法務のキャリアパス2つの道(専門性を磨く・複数の会社を経験する)のまとめ図解

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