退職はいつ・どう切り出すか【8ヶ月前に伝えた42歳課長の実録】

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退職を決めたあと、いちばん緊張するのは「退職を切り出す瞬間」ではないでしょうか。何ヶ月前に、誰に、何と言うか。検索しても一般論が多く、管理職の実例はなかなか見つかりません。この記事では、18年勤めた会社を42歳で退職した私の実体験を、切り出しから最終出社日まで時系列でお伝えします。

目次

退職の8ヶ月前、上司との定例面談で切り出した

私が退職を伝えたのは、退職の8ヶ月ほど前でした。特別な場を設けたわけではありません。もともと定期的に設定されていた、直属の上司との面談の場で、こう切り出しました。

「起業することにしたので、退職することにさせてください」

いま振り返ると、「相談させてください」ではなく「することにさせてください」という言い方になっていました。決めてから迷いなく伝えたので、自然とそうなったのだと思います。決定として伝えたことで、その後の話が「辞めるかどうか」ではなく「いつ・どう辞めるか」に進みやすかったようにも感じています。

「FIRE」ではなく「起業」と伝えた理由

このブログではFIREという言葉を使っていますが、職場でFIREと口にしたことは一度もありません。伝えたのは「起業する」ということだけです。FIREという言葉は職場では説明が難しい、と感じていました。「経済的に自立したので働き方を変えます」という説明は、人によっては資産への詮索や誤解を招きかねません。その点「起業」であれば、前向きな挑戦として受け取ってもらいやすいと感じました。退職理由をどう伝えるかは、正直さと角の立たなさのバランスで決めてよいのではないかと思います。

辞める理由は、ポジティブに徹する

退職を決めるまでの間には、会社に対して思うところが、多かれ少なかれ出てくるものだと思います。ただ、それを退職理由として口にするのは、やめておいたほうが良いというのが私の考えです。聞いた相手を不快にさせるかもしれませんし、何より、不満を言葉にすると、言っている自分自身が嫌な気持ちになります。誰も得をしません。

だから私は、「辞める理由はポジティブに」と決めて、徹底しました。口にするのは「起業に挑戦したい」という前向きな理由だけ。これは円満退職のための処世術であると同時に、退職までの数ヶ月を気持ちよく過ごすための、自分のための工夫でもあったと思います。

なぜ8ヶ月も前に伝えたか

民法では、退職の2週間前に意思表示をすれば雇用契約は終了する、と定められています。強行法規と解されており、これより長い予告期間を定めている就業規則は、労働者を拘束しないと考えられています。私は、8ヶ月前に退職の申し出をしましたが、かなり早い部類だと思います。

早く伝えたのは、管理職だったからです。課長が一人抜けるとなれば、会社は後任の選定や人員計画を考える必要があります。人事異動のサイクルを踏まえると、直前に伝えるほど周囲の負担は大きくなります。正直に言えば、辞めること自体への迷いはありませんでした。それでも、人員が減ることへの申し訳なさはありました。だからこそ、せめて時間だけは十分に渡そうと考えました。

引き止めはありがたいが、申し訳なさも感じる

切り出したその場、その後も含め何度か、引き止めの言葉をもらいました。実際に経験して分かったことがあります。大手企業では、人事制度がビシッと決まっており、引き止めるといっても、個別に待遇を変える余地は基本的にはないです。少なくとも私のいた会社では、「給料を上げるから残ってほしい」というカードは、制度上そもそも切れないものでした。出せるものがない中で引き止めなければならない上司は、正直つらそうに見えました。引き止められて困ったというより、引き止めさせてしまって申し訳ない、というのが、私の実感です。

それでも決意が揺らがなかったのは、意思が強かったからではなく、数字で決めていたからです。生活費と資産と配当を計算し、成り立つことを確認したうえでの退職だったので、「本当に大丈夫なのか」という問いには、感情ではなく計算で答えることができました。計算の手順は「自分のFIREラインを計算する5ステップ」に書いています。

引き継ぎの実際 後任の公表は最終出社の約1ヶ月前

8ヶ月前に伝えたとはいえ、後任が公表されたのは最終出社日の1ヶ月ほど前でした。引き継ぎの期間は、実質この1ヶ月です。

ここで効いたのが、引継書の準備を先に進めておいたことでした。後任が誰になるか、いつ決まるかは、自分ではコントロールできません。コントロールできるのは、「誰が来ても渡せる状態にしておくこと」だけです。業務の一覧、判断の基準、社内外の関係者、進行中の案件。これらを後任が決まる前から文書化を進めていたおかげで、最後の1ヶ月は資料づくりではなく説明に時間を使えました。

部下には、公表前に自分の口から伝えた

管理職の退職でいちばん悩ましいのは、部下へいつ・どう伝えるかではないでしょうか。私は、後任の公表より少し前に、「ここだけの話にしてください」という前提で、自分の口から直接伝えました。人事からの発表で初めて知る、という形にはしたくなかったからです。

伝え方にも気を使いました。上司の退職がネガティブな理由に見えると、不安が広がったり、退職が連鎖したりしかねません。だから「起業するために辞める」という理由もあわせて伝えました。一方で、この場では後任が誰かには触れていません。人事の公表前に、私の口から言うことではないと考えたためです。

有給30日は、すべて消化

退職を決めた時点で、有給休暇は30日ほど残っていました。結論から言うと、すべて消化しました。最終出社日を迎えたあとに有給消化の期間に入り、最終出社から少し間をあけて、正式な退職日を迎える形です。

有給の扱いは、退職を切り出す前にセットで考えておくと良い点だと思います。有給を消化すれば、そのぶん在籍期間が延びます。そして、退職日がどこになるかで、お金の面の結果が変わることがあるからです。

賞与は「支給日に在籍しているか」で決まる 規程の確認を

私の場合、有給消化で在籍期間が延びたことで、最後の賞与も受け取ることができました。

ここで、法務としてひとつだけお伝えしたいことがあります。多くの会社の賞与規程には、「支給日に在籍する者に支給する」という要件(いわゆる支給日在籍要件)が定められています。この場合、退職日が支給日の前か後かで、賞与を受け取れるかどうかが変わります。

賞与は金額が大きいだけに、この確認ひとつで結果が大きく変わることがあります。退職日を決める前に、自社の賃金規程や賞与規程で「いつまで在籍していれば支給されるのか」を確認しておくことをおすすめします。

やっておいてよかったこと・こうすればよかったこと

よかったこと① 退職後の社会保険・住民税を計算していた

退職すると、健康保険と年金は自分で手続きし、自分で払うことになります。住民税は前年の所得に対して課税されるため、収入がなくなったあとにも、会社員時代の所得に基づく請求が来ます。私は在職中に、退職後に何をいくら払うことになるのかを一通り計算していました。金額を把握していたおかげで、退職後の請求にも慌てずに済んでいます。

よかったこと② 企業型DCの移換先を決めていた

会社で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた場合、退職時に資産の移換手続きが必要になります。私は事前に調べて、iDeCoに移換すると決めてから退職手続きに臨みました。移換先の判断は退職手続きの中で必要になるので、調べておいて助かった点です。手続きをせずに放置すると、資産が「自動移換」という運用されない状態になってしまうため、ここは早めに調べておくと安心です。

こうすればよかったこと 感謝を伝えるタイミング

ひとつだけ悔いが残っているとすれば、本当にお世話になった方には、もう少し早く自分の口から伝えてもよかった、ということです。情報管理の観点では、伝える範囲は狭く、時期は遅いほうが安全です。ただ、公表で初めて知らせる形になってしまった方の顔を思い浮かべると、もう少しやりようがあったかもしれない、と今でも思います。

最終出社日 感謝と、うなぎとビール

最終出社日の挨拶では、凝ったことは何も話しませんでした。18年間お世話になったことへの感謝を、率直に伝えました。

帰り道は、自分でも意外なほど晴れやかでした。寂しさよりも、FIREを実現できたことへの喜びのほうが、ずっと強かったのを覚えています。その日は少し良いうなぎを食べて、ビールを1杯だけ飲んで帰りました。18年の会社員生活の締めくくりとしてはささやかですが、あの1杯の味は、当分忘れないと思います。

まとめ これから切り出す方へ

最後に、私の実体験から言えることを整理します。

・切り出すのは、迷いが消えてから。引き止めは一度では終わらないので、揺らがない状態を作ってから伝えるほうが、お互いに消耗しないと思います。私の場合、その支えは数字でした

・辞める理由は、ポジティブに徹する。不満を言葉にしても、誰も得をしません

・管理職なら、早めに伝えるのもひとつの誠意。後任の選定と人員計画には時間がかかります

・引継書は、後任が決まる前から作り始める。後任がいつ決まるかは、自分ではコントロールできません

・お金まわり(賞与の支給日在籍要件・社会保険・住民税・企業型DC)は、在職中に調べておく

退職の切り出し方に「正解の台詞」はないと思います。ただ、決めきってから、早めに、誠実に。私はこの3つで、8ヶ月前に切り出し、引き継ぎを終えて会社を去ることができました。

42歳でFIREという選択をするまでの考え方は「一度きりの人生、やりたいことをやる」に、そこへ至る18年の道のりは「法務課長が42歳でFIREを決意するまで」に、転職活動を始めるタイミングの考え方は「転職活動は何月に始めるか」に書いています。あわせて読んでいただけたら嬉しいです。

退職切り出しから退職日までのタイムライン実録図解

退職後の手続きは会社を辞めてFIREする人の退職手続きに、役職定年や出向への備えは役職定年・出向・関連会社にまとめています。

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