海外赴任を選ぶ前に考えたい7つのこと【中国赴任した私の判断軸】

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ある日、海外赴任の機会が、ふと目の前に現れることがあります。社内公募だったり、上司からの打診だったり。きっかけはさまざまですが、迷うポイントはよく似ています。行くべきか、いまの場所にとどまるべきか。

私は法務として、中国への赴任を自ら志願しました。手を挙げた理由や現地で得たものは別の記事(「29歳で海外赴任に自ら志願した話」)に書きました。この記事ではそこから角度を変えて、「行くと決める前」に私が実際に整理した7つの視点を共有したいと思います。

自分から手を挙げる人にも、声をかけられた人にも、考えることはそう変わらないと思います。

目次

機会が来たら、即答せず「7つ」で整理する

海外で働く話が持ち上がると、多くの人はまず「行きたいか、行きたくないか」という気持ちに向き合います。それ自体は自然なことです。ただ、気持ちだけで即答すると、後になって判断が揺れやすい、というのが、私の実感です。

そこでおすすめしたいのが、感情とは切り離して、まずは次の7つを一度書き出して整理してみることです。

1. なぜ、いま自分に海外の機会が来たのか

2. 自分の市場価値は上がるか(専門性は深まるか、広がるか)

3. 今後のキャリアにとって、有利な面と不利な面は何か

4. 収入はどれだけ増えるか

5. 赴任先の経営環境・評判はどうか

6. その仕事に、純粋に興味を持てるか

7. やらずに後悔しないか

一見ばらばらに見えますが、突き詰めると、中心になるのは2つの問いです。ひとつは「経験を通じて自分の市場価値が上がるか」という長期の価値(2と3はここに含まれます)。もうひとつは「赴任している間、収入がどれだけ増えるか」というお金の価値(4)です。この2つを順番に見たあと、残りの問い(1・5・6・7)にも触れていきます。

海外赴任で市場価値は上がるか、「深掘り」か「横展開」か

専門性が深まるのか、それとも横に広がるのか。この見極めは大切です。そして、この整理はそのまま3つ目の問い、キャリアにとって有利な面・不利な面の整理にもなります。

正直に言うと、海外赴任は必ずしも専門性の「深掘り」にはつながりません。私の経験でも、海外ではチームのマネジメントや現地スタッフを支える役割が中心になり、自分の専門分野をひたすら掘り下げるという働き方からは、むしろ遠ざかります。法務であれば、現地の言語と現地の法律を、ある程度は一から学び直す必要も出てきます。

ただ、これを「専門性が止まる時間」と捉えるか、「専門性を横に広げる機会」と捉えるかで、選択の意味は大きく変わります。一つの分野を深く掘るキャリアもあれば、複数の領域を横断できることが強みになるキャリアもあります。自分がどちらを目指しているのか。海外の機会は、それを考え直す良いきっかけにもなります。

収入はどれだけ増えるか、お金は感情でなく数字で見る

意外と後回しにされがちですが、お金の話は早めに、しかも数字で確認しておくことをおすすめします。

私も中国へ渡るにあたって、収入がどう変わるのかを実際に計算してみました。結果的に、私の場合、海外赴任手当は2年間でおよそ300万円。家計にとって、決して小さくない上積みでした。駐在中の資産形成については「海外赴任は、資産形成の絶好機」に書いています。

一方で、見落としがちなマイナス要素もありました。住宅ローン控除です。ちょうどマンションを購入した直後の赴任で、自分がそこに住まなくなるため、年およそ17万円の住宅ローン控除が、住まなくなっている間は使えなくなりました(帰国後に再入居すれば、残りの期間について再適用を受けられる制度もあります。届出が必要です)。

当初は、これが地味な不安でした。けれど数字にしてみると、仮にこの控除を10年間使い続けられたとしても、その総額は200万円には届きません。赴任手当の300万円と並べれば、経済的にはプラスだと判断できました。

この「数字に置き換える」という作業には、もう一つの効能があります。漠然とした不安が、消えることです。控除が使えないという事実は変わりませんが、それが赴任手当の中で十分に吸収できると分かった瞬間、私はそのことを気にしなくてよくなりました。お金は、感情ではなく数字で見たほうが、かえって不安が減り、納得して前に進めます。

もちろん、手当や控除の扱いは、会社の制度やご自身の状況によって変わります。「たぶん増えるだろう」で済ませず、自分のケースに当てはめて具体的に試算してみる。その一手間が、判断の土台になります。

環境・興味・後悔 残りの問い

まず、「なぜ、いま自分に機会が来たのか」。打診であれば会社が自分に何を期待しているのか、公募であれば自分は何を求めて手を挙げるのか。ここを言語化しておくと、残りの問いはぐっと考えやすくなります。

赴任先の職場が、どんな経営環境に置かれ、社内でどう見られているのか。これは入る前には見えにくい部分ですが、だからこそ、分かる範囲で人に聞いたり調べたりして、できるだけ解像度を上げておきたい項目です。

その仕事に純粋な興味を持てるか。そして、数年後の自分が「やってみればよかった」と思わないか。この最後の問いは、損得勘定では測れない分、案外いちばん効いてくるように思います。

行くと決める人と、いまの場所を選ぶ人を分けるのは、煎じ詰めれば「いまの場所で積み上げを続けたいか、それとも場所を変えて自分の市場価値を取りに行きたいか」という、重心の置き方の違いだろうと、私は考えています。これはどちらが正しいというものではありません。いまの環境で積み上げ続けることにも、十分な価値があります。大事なのは、自分がどちらに重心を置きたいのかを、はっきりさせておくことです。

家族と生活のことも、忘れずに確認する

判断軸とは別に、現実として確認しておきたいのが、家族のことです。

配偶者のキャリアをどうするのか、子どもの教育環境はどうなるのか、そもそも家族は帯同するのか、単身で行くのか。ここは一人では決められない領域です。だからこそ、自分の気持ちを整理したうえで、早めに家族と情報を共有しておくことをおすすめします。先ほどの収入の試算も、家族と話すときの大事な材料になります。可能性を感じた段階から少しずつ確認しておくと、いざ決めるときに落ち着いて判断できます。

ご両親がご高齢の場合は、一緒に過ごす時間が短くなるというネガティブがあることとも向き合う事が必要です。

最後は「自分で決める、自分で納得する」

海外で働く機会は、自分から手を挙げて掴むこともあれば、思いがけず打診を受ける形でやってくることもあります。志願は内側から湧き上がるモチベーションが起点で、打診は他者がくれた機会が起点です。入口は、確かに違います。

それでも、入口がどちらであっても、海外で働くことが「多様な価値観に触れ、自分の価値を高める」機会であることは、変わらないと思います。慣れた場所を離れる不安の向こうにあるものは、志願でも打診でも、そう大きくは変わらないように思います。

大事なのは、入口が志願か打診かではなく、最後に「自分で決めたかどうか」だと思います。行くにしても、いまの場所を選ぶにしても、自分で納得して決めたのであれば、それは正解です。流されて決めたことは、結果がどうであれ、後悔として残りやすいものです。

まとめ 海外赴任は「7つの問い」で数字と感情を整理する

海外で働く機会は、いつも準備が整ったタイミングで来るとは限りません。だからこそ、気持ちだけで即答せず、一度立ち止まって、冷静に整理する時間をつくってみてください。

最後に、7つの視点をもう一度。

1. なぜ、いま自分に海外の機会が来たのか

2. 自分の市場価値は上がるか

3. キャリアにとって有利な面・不利な面は何か

4. 収入はどれだけ増えるか

5. 赴任先の経営環境・評判はどうか

6. その仕事に興味を持てるか

7. やらずに後悔しないか

この7つについて、良い面と気になる面を紙に書き出してみる。それだけでも、頭の中はずいぶん整理されます。行くにせよ、いまの場所を選ぶにせよ、自分の言葉で理由を説明できる状態をつくってから、答えを出す。それが、後悔の少ない選び方なのではないかと思います。

なお、すでに打診を受けていて「断ったら評価に響くのか」が気になる方は、別の記事(「海外赴任の打診を受けたら知っておきたい」)も参考になるかもしれません。実際に赴任が決まった後の話や、帰国してからのキャリアの話は「海外赴任は、終わってから効いてくる」に書いています。

海外赴任を決める前の7つの視点のまとめ図解

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