海外赴任は、終わってから効いてくる。駐在が帰国後のキャリアと資産に残したもの

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海外赴任は、たいてい「行く前」の話ばかりが語られます。手当はいくらか、家族はどうするか、キャリアにプラスかマイナスか。けれど私の実感では、海外赴任が本当に効いてくるのは、終わってからです。

駐在で広げた視野、社外にまで伸びた人脈、現地で任されていた裁量、そして手元に残った資金。帰国して元のレールに戻ろうとしたとき、それらが「もう同じ場所には戻れない」と教えてくれました。

この記事では、私が帰国後に選んだ道と、海外赴任が”その後”に残してくれたものをお伝えします。

目次

帰国後、もう同じ場所には戻れなかった

帰国が近づくと、会社は戻り先のポジションを用意してくれます。私の場合も、肩書きの上では悪い話ではありませんでした。普通に考えれば、ありがたい話です。

それでも、戻る自分を想像したとき、どこか引っかかるものがありました。海外では、一段大きな立場でチームを率いていました。何をどう進めるか、かなりの部分を自分で決めていました。ところが帰国後に待っているのは、よく知ったメンバーの中で、以前の業務に戻っていく感覚でした。

実際、戻ってみて一番感じたのは、裁量の幅が小さくなったことです。肩書きは上がっても、自分の考えを形にするための「てこ」が、以前ほど効きません。海外で「自分で決めて、大きなチームで動かす」ことに慣れた身には、その違いが思いのほか大きく感じられました。

「赴任前と同じ」に戻ってはいけない理由

なぜ、元と同じ場所に戻るのがもったいないのか。二つあります。

一つは、視野です。海外で事業の現場に立つと、見える景色が変わります。本社からは見えなかった現場の実態、意思決定のスピード感、前提の違う相手との交渉。こうして広げた視野は、元の枠組みでは使いどころが限られます。

もう一つは、人脈です。駐在中は、社内だけでなく、取引先や現地で出会った他社の人たちとも、濃い関係ができます。そうして社外にまで伸びた人脈も、元の部署のルーティンに戻ると、活かす機会が少なくなります。

視野も人脈も、いったん広がると、元のサイズには戻しにくいものです。だからこそ、「赴任前と同じ」を当たり前の戻り先にしない。これが、私が身をもって感じたことでした。

法務として、海外経験は活きるのか:活きる部分、活きにくい部分

ここで、私の専門である法務・管理部門に引きつけて、正直なところを書いておきます。海外赴任の経験は、職種によって「活きやすさ」がかなり違います。

法務という仕事には、国ごとに法律が違う、という特徴があります。駐在中は、その国の法律をベースに仕事をします。帰国すれば、また日本の法令や、各国にまたがる論点に頭を切り替える。駐在国で身につけた個別の法律知識を、そのまま日本で使える場面は、そう多くありません。専門性が高いほど、知識が「現地仕様」になりやすいのです。

それでも、確かに活きる部分があります。海外事業の「実態」を、肌で知っていることです。たとえばコンプライアンスの仕事では、現地で何が起きているかを知らないまま机上でルールを作ると、現場で回らないものになりがちです。駐在した国がどこであっても、海外の現場を肌で知っていること自体が、専門職が海外赴任から持ち帰れる確かな財産だと思います。

迎える側になって分かった、帰任者の活かし方

その後、私は管理職として、海外から戻ってくる人を迎える側にも立ちました。自分が感じたあの感覚を覚えていたので、帰任者を受け入れるとき、一つだけ強く意識していることがあります。できるだけ裁量を渡す、ということです。

海外で自分の判断で動いてきた人に、細かい報連相を求めすぎると、「こうすべきだ」と思うことも、いちいち上にお伺いを立ててからでないと進められません。それでは、力のある人ほど物足りなさを感じてしまいます。

帰任者がその力を最大限に発揮できるかどうかは、本人の能力や意識以上に、迎える側が裁量をどう渡すかにかかっている。迎える立場になって、私はそう考えるようになりました。

海外赴任が、”その後”に残したもの

最後に、海外赴任が、当時はまったく意識していなかった形で、後の人生に効いてきた話をします。

一つは、お金です。赴任中は、手当などで収入が一時的に大きくなります。私はそのお金を、当時は深く考えず、住宅ローンの繰り上げ返済と貯金に回していました。FIREという言葉も、まだ意識していませんでした。ところが結果として、このとき身軽になって手元に残った資金が、後の株式投資の元手へとつながっていきました。海外赴任は、キャリアだけでなく、資産にも効いてくる。後になって気づいたことでした。

もう一つは、生き方の選択肢です。私が駐在していた中国は、自分で事業を起こす人がとても多い場所でした。周りに起業する人が当たり前にいる環境に身を置くうちに、「独立」という選択肢が、知らないあいだに頭の片隅へ置かれていたのかもしれません。

視野、人脈、裁量、資金、そして生き方の選択肢。海外赴任が私に渡してくれたものは、駐在の最中よりもむしろ、終わってからじわじわと効いてきました。

まとめ 帰任は「元に戻る」ことではない

海外赴任を終えるとき、私たちはつい「元の場所に戻る」と考えます。けれど私の実感では、帰任は元に戻ることではなく、次を選び直すための起点でした。

駐在で広げた視野や人脈、慣れ親しんだ裁量、手元に残った資金、そして新しく芽生えた価値観。これらを、元の枠の中に無理に押し込める必要はありません。同じ場所に戻らないことは、前に進むための合図なのかもしれない。これから帰任を迎える方には、そう伝えたいと思います。

なお、関連する話は、それぞれ次の記事に書いています。

・「29歳で海外赴任に自ら志願した話」(そもそもなぜ海外を志願したのか)

・「海外赴任を選ぶ前に考えたい7つのこと」(赴任を受けるかどうかの判断軸)

・「中国でチームを率いて分かった、通用した日本式・しなかった日本式」(現地でのマネジメントの実際)

・「海外赴任は、資産形成の絶好機」(駐在中のお金の実際)

・「法務課長が42歳でFIREを決意するまで」(駐在で得たお金が、後にどうFIREへつながったか)

海外赴任が帰任後のキャリア・資産・価値観に残したものの図解

関連記事: 海外赴任とお金・キャリアの全記録

関連記事: 海外赴任は、資産形成の絶好機。駐在前に「証券口座」を開いておきたい理由

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